胴、面と三回に渡

、胴、面と三回に渡って素早い突きを繰り返し、引く度に横に払う技であり、引く事によって刀の で相手に深い傷を与える事が出来た。

 

 

近藤や沖田が納めている天然理心流では実戦を想定した流派であるため、剣術だけではなく柔術や 一方その頃。

 

白岩の行く先では、富途新聞 古高捕縛を聞いたと思われる浪士が不意に斬りかかってきた為、その相手をせざるを得ない状態にあった。

 

逸る気持ちが自身を焦らせ、本来ならば直ぐに仕留められるところが時間が掛かってしまう。

 

 

何とか斬り伏せて吉田の隠れ家に着く頃には、すっかり薄雲の掛かった月が上がっていた。

 

戸を叩くが、中には人の気配がない。万が一深く寝ている可能性を考え白岩は戸を開けて入った。

 

 

しかしそこには吉田の姿はない。厨の水は蒸発し、行灯からは温かさが消えていた。その様子から、出て行ってから時間が経過していることを察した。

 

「遅かった…!」

 

白岩は踵を返そうとするが、文机に書き置きがあることに気付く。

 

草履を脱いで文机の前に行き、すっかり墨の乾いたそれに手を伸ばした。

元々は学なんて一切なく読み書きなんて出来なかったが、吉田の根気強い教えによって何とか読めるようにはなっていた。

 

 

池田屋へ、向かう…」

 

それを口に出してから、身体中から血の気が引くのを感じる。

 

池田屋って…」

 

"近藤局長が鴨川西の木屋町付近を探索するとのことです。こちらは沖田君や永倉君もいるので、大丈夫でしょう。"

 

聞いたばかりの山南の言葉が脳裏に反響した。

 

木屋町というと、池田屋がある場所ではないか。先生も剣術を納めているとはいえ、得物は刀ではなく槍だ。屋内での戦闘には向かない上に、近藤や沖田、永倉とまともにやり合えば…。

 

「くそっ!!」

 

心臓が徐々に嫌な音を立て始めた。手が自然と震えるのを抑えつつ、弾かれたようにまた走り出す。池田屋の二階では激戦が繰り広げられていた。

数では圧倒的に新撰組が不利だったが、その技巧と気迫に浪士の方が圧されていた。

 

「総司、奥は頼んだぞッ」

 

近藤は複数人を引き受け、沖田を奥座敷へ向かわせる。

 

「はいッ!」

 

沖田が襖を蹴破ると、そこには三人の浪士の姿があった。沖田は宮部鼎蔵とその下僕である忠蔵を把握する。

 

宮部鼎蔵、ですね」

 

沖田はそう呟くと刀を平青眼に構える。

 

吉田はその鬼神の如き姿を認めるなり、ある違和感を感じ右胸を押さえた。それは昨夜のものと同じものだった。

 

「…田殿、吉田殿!」

 

そこへ忠蔵の逼迫した縋るような声が聞こえ、意識を現実へと戻す。

 

「宮部殿、逃げなさんせ!僕が活路を切り開くけぇ!」

 

ハッとした吉田は鬼切丸を抜いて宮部の前に庇うように立った。

今ここで宮部を失うのは得策ではない。それならば自分が盾となって少しでも時間を稼いだ方がいい。そう吉田は考えたのである。

 

しかしその思考とは裏腹に、宮部の足は動く気配がない。

 

沖田や近藤にやられ、事切れている仲間を見詰めては何かをぶつぶつと呟いていた。

 

 

「壬生狼め…壬生狼め!逃げる事はワシには出来ぬ!壬生狼なんぞにやられてたまるものか!」

 

宮部は脇差を抜くと、吉田を押し退けて沖田に斬りかかった。

 

沖田は攻撃を難なく避け、無明剣を繰り出すと宮部の持つそれを部屋の端まで弾き飛ばす。そしてその腹部と足に一突きずつ見舞った。

 

「ぐああッ!!」